知財担当者(企業の知財部や特許事務所の弁理士)が特許明細書などを起案する際には、研究者から提供された発明提案書などを確認し、その発明の「効果」がどのような構成、原理、機能などによって発揮されるのかという点を骨子にしながらおこなっていくとおもいます。しかし、研究を行っている現場では、なぜこの「構成など」がよい「効果」を発揮したのかが完全には明らかになっていない場合もありえます。
例えば、ある材料Aに、別の材料Bを10重量%混ぜてみたところ、全く予期しない有利な物性が発現した場合などです。このような場合、AにBを混ぜる行為には直接の課題がないわけなので、発明提案書には、「AにBを10重量%混ぜたら予期しない有利な物性が発現した」という内容のものが記載されていることもあるわけです。
この場合、知財担当者が「Bを10重量%含むA」という発明のみを明細書及び特許請求の範囲に記載するのみでは、非常に権利範囲の狭い特許になってしまいます。
例えば、特許出願後、「Bを5重量%含むA」でも同様の効果があることが他社の研究により判明し、その権利を他社に取得されたり、BではなくCを使った場合、よりよい効果があることが他社の研究により判明し、「Cを10重量%含むA」という権利を他社に取られたりすると、「Bを10重量%含むA」の権利の価値は減少していってしまうかもしれません。(Bが5重量%でよいなら10重量%使う必要はなく、Cを含む方がよいならAが使われる可能性は減少するため)
こういった事態をさけるためには、研究者と知財担当者の間では、
① 本発明の肝(本質的部分)はどこにあるのか?本件の場合はi)Bが肝なのか、ii)10重量%が肝なのか
② i)BでなくてCやその他の材料でも可能なのか? ii)AでなくてDなどではどうか?
③ Bが混ぜられた際にAの構造などは変化していないのか?重量%以外で表現できる可能性はあるか?
などの事実関係を確認したり、追加データについて相談したりできると、その後に出願される特許が価値の高い特許権になる可能性が高まります。研究者としても、知財担当者から聞かれないから説明しないだけで把握している場合もあり得ます。
しかし、研究者の立場からすれば、
「そうはいっても何が肝かはまだ不明だからあまり不確実なことは言いたくない」
「肝を見つけるためには、追加の実験を行う必要があり、時間が必要だ」
「追加実験の予算を研究部の上長が許可しない」
などの、事情を相談されることもあるかもしれません。
その場合は、知財部、研究部、(または、経営陣)との調整案件になることになるでしょう。
よって、価値の高い特許権を取るためには社内調整が必要になってくるのかもしれません。社内調整には日頃のコミュニケーションが重要になってきます。
言い換えれば、強い特許を取れる会社は、部門間コミュニケーションが強い会社なのかもしれません。

部署間コミュニケーションはどうしたら強くなるのか?
コミュニケーションは信頼によって強化されます。
信頼は共に過ごした時間や価値観の共有などによって醸成されます。
知財部と研究部のコミュニケーションの強化
知財部が研究現場に飛び込む: 知財部員が定期的に開発現場へ出向き、研究者が「当たり前」だと思っている作業の中から、本人も気づいていない「発明のタネ」を聞き出します。
研究部が知財部に飛び込む:研究結果が世に出るためには、特許権などの知的財産権の意識が必要である(良い研究結果でも他社特許を侵害しているなら簡単に製品化などができない)との理解を得てもらうのも効果的かもしれません。
経営陣とのコミュニケーションの強化
経営陣がどのような事業をおこなって会社を成長させようとしているのかを各部門に明確に共有することで各部署のコミュニケーションの助けとなることが期待できます。また、知財を重要資源として位置づけているのであれば、それも各部門に共有することが有効です。
あなたの会社に眠っている「おぼろげな発明」も、対話と戦略次第で、事業を支える強力な武器に変わるはずです。
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